幸せな日々と「一枚の紙」の不在

キム・ジウンさんとチェ・ミンホさんは、ソウル市内の小さなマンションで7年間、夫婦として暮らしてきました。二人は結婚式を挙げ、親戚や友人の前で一生を共にすることを誓い合いましたが、仕事の忙しさやタイミングを逃したことで、婚姻届だけは提出していませんでした。周囲からは仲睦まじい「夫婦」として認知され、お互いの両親の誕生日を祝い、家計も一つにして生活していました。

しかし、些細な価値観のズレが積み重なり、二人は別々の道を歩むことになります。問題になったのは、5年前に購入したマンションの存在でした。購入資金は二人の貯金と共働きの給料から返済されてきましたが、登記上の名義はミンホさん一人になっていました。別れ際、ミンホさんは「法的に結婚していないのだから、この家は僕のものだ」と主張し、ジウンさんは路頭に迷う危機に直面しました。

法的な争点:届出のない関係に財産権はあるのか?

このストーリーにおける核心的な問いは、「婚姻届を提出していない事実婚関係が解消される際、当事者は法律婚の離婚と同じように、共同で築いた財産について財産分与を請求できるのか」という点です。

韓国法が定める「事実婚」の定義と効力

韓国の法律において、事実婚とは単なる同棲とは明確に区別されます。事実に基いた婚姻関係として認められるには、以下の条件が必要です。

  • 主観的に、当事者間に婚姻の意思があること。
  • 客観的に、社会通念上、家族秩序の観点から夫婦共同生活と認められる実体があること。

事実婚の場合、婚姻届を前提とする「相続」などの規定は適用されませんが、一方で以下のような法律婚に準ずる効力が認められています。

「事実婚関係においては、同居、扶養、協力、貞操の義務、日常家事代理権、特有財産の各自管理、および財産分与請求権が認められる。」

ただし、公序良俗に反する近親婚や、すでに別に法律上の配偶者がいる状態での「重婚的事実婚」などは、法的な保護の対象外となります。

韓国裁判所のアプローチ:実質の重視

韓国の最高裁判所は、財産分与の性質を「夫婦が協力して築き上げた財産の清算」と捉えています。そのため、形式的な婚姻届の有無よりも、「生活共同体としての実質」を重視します。

裁判所の判断基準を整理すると以下の通りです:

  1. 事実婚期間中に共同で形成した財産は、名義がどちらであっても分与の対象となる。
  2. どちらに属するか不明な財産は共有と推定する。
  3. 事実婚の解消に伴う財産分与には、民法の離婚に関する規定を類推適用する。

ジウンさんのケースへの適用

ジウンさんとミンホさんの場合、7年間の共同生活、結婚式の挙行、親族との交流などから、明らかな「事実婚」に該当します。問題のマンションはミンホさんの名義ですが、ジウンさんの共働きの収入がローンの返済や家計の維持に寄与していたことは明白です。

韓国の判例によれば、こうした「協力して築いた財産」は、清算の意味を持つ財産分与の対象に含まれます。したがって、ジウンさんはミンホさんに対し、マンションの価値のうち自分の寄与分に相当する金額を請求することが可能です。名義がミンホさん一人であることは、分与を拒否する決定的な理由にはなりません。

結論:守られるべきは「共に歩んだ時間」

最終的に、ジウンさんは弁護士を通じて事実婚の存在と財産形成への寄与を立証し、適正な財産分与を受けることができました。法は「一枚の紙(婚姻届)」の不在を理由に、長年の献身的な共同生活を無視することはありません。

もし、あなたや周囲の人が同様の状況にあるなら、以下の2点に注意してください。

  • 共同生活の証拠を確保すること: 結婚式の写真、家族行事への参加記録、共同の通帳や生活費の送金履歴などは、事実婚を証明する強力な武器になります。
  • 清算の合意は書面で: 別れる際に口約束で済ませず、財産分与について具体的に合意した内容を書面に残すことが、後の紛争を防ぐ最善策です。

愛が終わったとしても、共に築いた生活の価値まで失う必要はないのです。

** *本コラムは一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な問題については、専門の法律家にご相談ください。